小売業でできるDXとは?活用例や成功事例・取り組む際に意識すべきことについても紹介
新型コロナウイルス感染症の広がりの影響により、さまざまな業種において働き方が大きく変化しました。小売業においてもDXの取り組みが推進されており、従来とは異なる店舗運営の方法が模索されています。この記事では、小売業でDXに取り組みたいと考えている企業の担当者に向けて、小売業のDXの特徴や成功事例などを解説します。
目次[非表示]
- 1.小売業で注目されるDXとは
- 2.小売業におけるDXとは
- 2.1.データやツールの活用
- 2.2.データやツール活用による業務効率化
- 2.3.OMOの導入・活用
- 2.3.1.OMOとは
- 2.3.2.小売店におけるOMO活用例
- 3.小売業におけるDX事例
- 3.1.【レジ不要のショッピングカート】スーパーマーケット「トライアル」の事例
- 3.1.1.ショッピングカートでスキャンして決済まで完結
- 3.1.2.DX推進事例として注目すべきポイント
- 3.2.【リアルタイムで在庫確認】東急ストアの事例
- 3.2.1.在庫データが15分ごとに更新され品出しの負担減に
- 3.2.2.DX推進事例として注目すべきポイント
- 3.3.【AI×コンビニ】TOUCH TO GOの事例
- 3.3.1.AIセンサーによる無人コンビニの運営に成功
- 3.3.2.DX推進事例として注目すべきポイント
- 4.小売業でDXを推進するには
- 4.1.全社最適を目指して取り組む必要がある
- 4.2.まずは店舗運営のDXに取り組む
- 5.まとめ
小売業で注目されるDXとは
DXとは「Digital Transformation」を略した表現であり、最新のデジタル技術やデータを活用することで、企業のビジネスモデルを改革する方法です。最新のデジタル技術を用い、ビジネスを最適化する手法とも表現できます。
DXは業界や業種を問わず広まっており、多くの企業が取り組み始めています。小売業においてもDXに対する注目度は高まっている状況です。小売業におけるDXの特徴について、以下でくわしく解説します。
小売業におけるDXとは
小売業におけるDXとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、小売業におけるDXの取り組みについて解説します。
データやツールの活用
DXとは先述したとおり、最新のデジタル技術やデータを活用することで、企業のビジネスモデルを改革することです。データやツールを活用し業務を効率化していくことが必要になります。
小売業の店舗においては、日々の営業のなかで膨大なデータが発生しています。顧客の属性に関する情報に加え、店内の行動履歴や購入履歴なども小売業にとっては重要なデータです。
ツールやAI等を活用し、これらの膨大なデータを統合・分析することはDX実現においての重要な一面です。システム導入により手作業で行っていた決済業務や顧客管理などが自動化されることで、作業効率が向上するとともに、人的ミスを回避することも可能です。また、顧客データを活用することで、顧客エンゲージメントの向上につなげることが出来ます。お客様に選ばれるお店になることで売上向上を狙うことが出来ます。
画像データの活用も進んでおり、店頭で得られるデータの幅が広がっています。例えば、店頭に設置したカメラ映像から、顧客の属性や行動データを得ることもできます。また、売場に設置したカメラの画像を用いて、棚の充足率や欠品状況を分析しアラートを出すことによって売上ロスを防いだり、作業状況が見える化されることによって効率的な人員計画も可能になります。
こうしたデータを分析・活用すれば、よりそのお店らしい顧客対応や、そのお店らしいマーケティング施策を実施できるようになるはずです。
データやツール活用による業務効率化
小売業のDX実現の取り組みは、データやツールを活用することで業務効率化を実現します。ここでは、データやツール活用による業務効率化についていくつか取り上げて解説します。
在庫管理
店舗で扱っている商品数が多いほど、在庫管理は煩雑になります。しかし、商品の在庫管理も、DXを推進するなかで取り組むべきものです。すでに小売業では、POSシステムで蓄積した購買データをもとに受給予測を立て、在庫管理システムで在庫を管理するという形が定着しつつあります。
在庫システムを活用することで、在庫の入出庫や在庫の過不足がリアルタイムで把握可能になります。適正在庫を維持したり、在庫を見える化したりすることが可能になり、廃棄ロス削減等にも繋がります。
さらにAIの技術を取り入れれば、今後の売上についての正確な予測もできます。最適なタイミングで必要な数の商品を自動的に発注できるため、商品の過不足が生じるリスクの軽減が可能です。
在庫管理がスムーズになれば、業務効率化になるだけでなく、商品の管理にかかる人件費や保管コストも減らせます。ヒューマンエラーによる発注ミスも防止できるでしょう。
勤怠管理
小売業の店舗では、たくさんの従業員が働いています。人によって雇用形態は異なり、勤務時間もバラバラであるケースが多いです。そのため、店舗で働く従業員の勤怠管理は複雑であり、管理に多くの負担が発生しています。たとえば、シフト作成や店舗ごとの労働時間の把握などに苦労している企業も多いようです。
勤怠管理の一連の流れである、シフト作成~タイムカード管理~勤務データの集計などを一元管理できるシステムやツールを導入することで、大幅な業務効率化が実現可能です。
社員教育
小売業でDXを推進するために、社員教育のデジタル化も推進しましょう。就業規則や業務マニュアルをデータ化すれば、それぞれの従業員が確認したいタイミングですぐに閲覧可能です。
また、マナーや顧客対応についての研修も、動画の配信により各人が必要なときに修得できるようになります。店舗で働く従業員はシフトが異なるケースもあり、従業員を集めて研修を実施するのは時間的制約もあり効率的ではありません。研修も動画活用やビデオ会議システムを利用することなどで、社員教育を行う従業員の負担も軽減できます。
店舗運営の省人化
DXを進めていく取り組みでは、店舗運営が効率化されることで、結果として運営に必要な人員を減らすことも可能です。スーパーマーケットやコンビニなどでは、店員がレジで商品登録を行い、顧客が自分で決済するセミセルフレジや、商品の価格を顧客自身が機械で読み取り、決済も自分で行うセルフレジの導入が進んでいます。特にコロナ禍以降、普及率が加速している印象です。
このような省人化の取り組みは、コスト削減、業務の効率化につながるとともに、小売業の慢性的な人手不足の解消にもつながります。
OMOの導入・活用
小売業のDXの取り組みのひとつとして、OMOの概念が導入されています。以下では、OMOの概要と活用例を解説します。
OMOとは
OMOとは「Online Merges with Offline」の頭文字をとった言葉であり、オンラインと実店舗のサービスを融合させながら、顧客の購買意欲を促進するマーケティング手法です。企業の都合ではなく、顧客の体験を重視している点が大きな特徴です。OMOは世界でもトレンドとなりつつあります。
小売店におけるOMO活用例
ECサイトと店舗のそれぞれが保有している顧客データを一元化すれば、有効活用が可能です。たとえば、店舗の購買履歴をもとに、顧客が気に入りそうな商品をECサイトでおすすめ商品として表示させることが可能です。顧客はわざわざ自分で検索しなくても好きな商品をみつけられ、スムーズに購入手続きができます。
顧客の買い物シーンにおけるストレスを軽減し、リアルでもオンラインでもより便利により快適に買い物体験ができることで、顧客の満足度向上に寄与すると考えられます。
小売業におけるDX事例
すでに多くの小売業の店舗でDXの取り組みの結果、さまざまな成果につながっています。ここからは、小売業におけるDX取り組み事例を紹介します。
【レジ不要のショッピングカート】スーパーマーケット「トライアル」の事例
スーパーマーケットの「トライアル」では、レジが不要となるショッピングカートを導入しています。以下でくわしく解説します。
ショッピングカートでスキャンして決済まで完結
購入したい商品をカゴに入れる際に、ショッピングカートに設置されている端末で商品をスキャンします。その場で購入予定の商品の情報が登録されるため、顧客はわざわざレジでチェックを受ける必要がありません。端末で手続きすれば、そのまま決済が可能です。
また、ショッピングカートにはセンサーがついており、スキャンしていない商品がある場合はアラートが表示されます。そのため、スキャンの漏れが発生するリスクも抑えられています。
DX推進事例として注目すべきポイント
端末にはレコメンド機能が搭載されており、顧客におすすめの商品を紹介しています。顧客が商品に興味をもち、購買を促進する仕組みです。
また、商品を選び終えた後にレジを利用する手間がないため、レジ待ちのストレスを軽減し、来店の促進につながっている点もひとつの特徴といえます。レジの人員削減も可能になりました。
【リアルタイムで在庫確認】東急ストアの事例
スーパーマーケットの東急ストアにおいても、DXの取り組みがなされています。ここでは、東急ストアの事例について紹介します。
在庫データが15分ごとに更新され品出しの負担減に
東急ストアでは、在庫管理を自動化しています。15分ごとに在庫データが更新されるため、リアルタイムで在庫の状況をチェックできます。品出しの際もタブレット端末から在庫の有無を確認でき、スムーズに作業できるようになりました。
また、在庫管理の自動化は、ネットスーパーの運営の効率化にもつながっています。ネットスーパーと店舗の在庫情報を連携させ、注文が集中しても実際の在庫状況に応じて注文を受けられるようになっています。
DX推進事例として注目すべきポイント
品出しが必要な商品について在庫の有無をすぐに確認できるようになり、商品棚の品切れによる販売ロスを防止できるようになりました。また、ネットスーパーと店舗の在庫情報の連携により、ネットスーパーで注文を受けた商品のピッキング作業の効率が大幅にアップしています。これにより、作業に必要な工数も削減できたため、生産性の向上につながっています。
【AI×コンビニ】TOUCH TO GOの事例
AIを活用したコンビニの「TOUCH TO GO」も登場しています。具体的な内容とポイントについて解説します。
AIセンサーによる無人コンビニの運営に成功
TOUCH TO GOは、2020年に開店した無人のコンビニです。品出しのためにバックヤードには従業員がいますが、商品が並んでいる店内には基本的に従業員が待機していません。
顧客が商品を棚から手にとったり、カゴに入れたりすると、AIがセンサーで自動的に感知します。セルフレジに行けば自動的に購入金額が表示されるため、スムーズな精算が可能です。
ファミリーマートやANAなども、TOUCH TO GO協業としてこのシステムを導入し始めています。
DX推進事例として注目すべきポイント
センサーで顧客の購買に関するデータを収集して管理しているため、在庫管理や商品の発注も自動的に行えます。また、商品の状況を常にモニタリングでき、万引の防止にも役立っています。
店内に従業員が待機する必要がないため、レジスタッフ、事務業務スタッフ、警備員などに支払う人件費も大幅に削減可能です。
小売業でDXを推進するには
小売業でDXを推進するうえではどのようなことを意識したらいいのでしょう。ここでは、意識すべきことについてくわしく解説します。
全社最適を目指して取り組む必要がある
DXを推進するためには、一部の部署だけでなく全社的に取り組まなければなりません。一部の部署でDXに力を入れても、全体的な変革にはつながらないでしょう。
状況によっては、自社だけでなく社外関係者も巻き込みながらDXを進めていく必要があります。仕入先とも連携してDXを推進できると、より効率的に利便性の高い仕組みを構築できる可能性があります。業務のつながりを考慮しながら、広い範囲を改善しDXを実現できるようにしましょう。
まずは店舗運営のDXに取り組む
DXに取り組む際には、華やかなAI活用やネットスーパーに意識が向かいがちです。ですが、どれほど先進的な技術をとりいれても、店舗運営という土台が整っていなければ、それらの効果は半減してしまいます。施策のPDCAを回すことや本来業務へ時間が割ける仕組みや体制を整えることは、一見遠回りに見えますが、効果を最大限発揮する近道となります。
まとめ
小売業においてもDXを推進する企業がどんどん増えています。事例も参考にしつつ、自社にとって最適なかたちでDXを進めましょう。
株式会社ネクスウェイは、10年以上にわたりチェーンストア企業向けの情報通信サービスを提供してきました。本部と店舗のコミュニケーションを促し、店舗運営のDXを推進するツールやアプリを用意しています。自社の特徴を活かしてDXを推進するために、ぜひお気軽にご相談ください。
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