catch-img

【事例あり】店舗DXのROIの考え方と投資判断のための5つの指標

目次[非表示]

  1. 1.店舗DXの効果をROIだけで見てはいけない理由
    1. 1.1.なぜ店舗DXのROIは出しづらいのか?
    2. 1.2.間接的な要因が多いため
    3. 1.3.金銭的・定量的な評価が困難なため
  2. 2.結論:ROIで評価できる領域は限定的である
    1. 2.1.DX投資を成功に導く「5つの評価軸」
    2. 2.2.1. リスク回避(コスト回避)
    3. 2.3.2. 顧客価値(CX向上)
    4. 2.4.3. 組織指標(EX向上)
    5. 2.5.4. オプション価値(レバレッジ)
    6. 2.6.5. TCO(総保有コスト)
  3. 3.投資の判断基準は「5つの評価軸」だけではない
  4. 4.成果創出のための「ストーリーライン」
  5. 5.50店舗弱の小売企業が「店舗matic」で課題解決を実現した事例
    1. 5.1.Step 1:ベースラインの可視化 〜現状課題の洗い出し〜
    2. 5.2.Step 2:KPIツリーの設計 〜経営課題とKPIの連動〜
    3. 5.3.Step 3、4:導入期・定着期 〜トップダウンとボトムアップの体制〜
    4. 5.4.Step 5:効果測定 〜KPI達成と5つの評価軸による多角的な評価〜
  6. 6.まとめ

店舗DXを推進するうえで、多くの企業が悩むのが「費用対効果をどう判断するか」という点です。

ツール導入や業務効率化の施策を検討する際、ROI(投資収益率)を基準に投資判断を行うケースは少なくありません。しかし、店舗DXの効果は売上やコスト削減だけでなく、顧客体験の向上、従業員の働きやすさ、情報共有の効率化、業務品質の安定化など、さまざまな形で現れます。

店舗DXにおける費用対効果を多角的な視点から捉え、投資判断から導入後の成果創出までを確実に設計する方法について深く掘り下げて解説します。

ROIのみに囚われず、真に価値あるDX投資を見極めるための「5つの評価軸」と、導入後に確実な成果を創出するための「KPIツリーとストーリーライン」の設計方法を、具体的な事例を交えて紹介します。

この記事は、株式会社ネクスウェイが実施したウェビナーの内容を基にしています。要点を分かりやすくまとめ、ご参加いただけなかった方にはその価値を、ご参加された方には内容の振り返りとしてご活用いただけるよう、詳細にお届けします。

【ホワイトペーパーのダウンロードはこちらから】

店舗DXの効果をROIだけで見てはいけない理由

店舗DXを推進する際、「ROI(投資収益率)はどれくらい出るのか?」という問いに直面することが多くあります。しかし、ROIだけを基準に投資判断を行うことには大きな危険が伴います。

例として、以下の領域への投資は短期的には売上に直結しにくいため、ROIを算出することが難しい傾向にあります。

  • 人材の教育や採用
  • エンゲージメント向上
  • 日々の業務効率化

しかし、「ROIが出しづらい」という理由でこれらの重要な領域への投資を怠ることは、中長期的な競争力を自ら放棄することに等しいといえます。

なぜ店舗DXのROIは出しづらいのか?

なぜ店舗DXのROIは出しづらいのか?

【ホワイトペーパーのダウンロードはこちらから】

店舗DXのROIが出しづらい最大の理由は、間接的・多段階・長期的に効果が現れる構造であるためです。

言い換えれば、店舗DXは「実際には効果が出ているにもかかわらず、数字として証明しづらい投資」とも言えるでしょう。

以下から、店舗DXのROIが出しづらい理由を2つの視点から紹介します。

間接的な要因が多いため

売上を構成する要素を掘り下げると、客数や客単価だけでなく、接客品質、オペレーション速度、人材スキル、さらには教育制度や従業員のエンゲージメントなど、多くの間接的な要因が絡み合っています。これらは「売上が上がる状態」や「売上が上がる組織」を作るための基盤となる施策であり、売上までの道筋が長いため、直接的な因果関係を数値化しにくいのです。

金銭的・定量的な評価が困難なため

さらに、コスト削減効果と価値創出のいずれも金銭的な評価が困難である点も、ROI算出を難しくしています。

業務効率化によって店舗スタッフの時間を削減できたとしても、その削減された時間を直接人件費削減に繋げられるわけではありません。また、接客時間の増加やオペレーションの安定化、従業員エンゲージメントの向上といった価値創出も、売上との因果関係が不明瞭であり、効果の発現に時間差があるため、定量化が難しい領域です。

結論:ROIで評価できる領域は限定的である

これらの理由から、店舗DXにおいては、以下のように「ROI評価に適している領域」と「ROI評価に適していない領域」を明確に区分することが重要であることがわかります。

ROI評価に適している領域

ROI評価に適していない領域

  • デジタル広告やクーポンなどの販促施策
  • 製造コスト改善などの生産ライン
  • ロス削減などの在庫・物流改善
  • 固定費(設備・光熱費など)の削減
  • 棚割りや商品関連の改善

→売上に直結し、金銭的に測定しやすい

  • コミュニケーション改善
  • タレントマネジメント・人材活用
  • 人材育成・組織改革
  • CX / EXの向上施策
  • 日々の業務オペレーション効率化

→効果が出ても、金銭的に測定しにくい

DX投資を成功に導く「5つの評価軸」

DX投資を成功に導く「5つの評価軸」ROI評価が難しい領域のDX投資においては、単一の指標に囚われず、多角的な視点から施策の価値を捉えることが重要です。具体的には、以下の「5つの評価軸」を起点に総合的に判断できます。

評価軸

内容

  1. リスク回避(コスト回避)

損失や事故をどれだけ防げるか

  1. 顧客価値(CX向上)

顧客体験をどれだけ前倒しで向上できるか

  1. 組織指標(EX向上)

従業員体験(EX)にどのような影響を与えるか

  1. オプション価値(レバレッジ)

一度の投資がどれだけ広く・長く効果を波及させるか

  1. TCO(総保有コスト)

総額で見たとき、本当にコスト最適化されているか

【ホワイトペーパーのダウンロードはこちらから】

5つの評価軸について、以下から詳しく紹介していきます。

1. リスク回避(コスト回避)

「リスク回避」では、指示の実行漏れによる売り逃し、情報漏洩によるブランド毀損、確認漏れによるクレーム、オペレーション事故といった潜在的なリスクをどれだけ低減できるかを評価します。

測定例としては、実施漏れの件数、インシデント・クレーム件数の減少、機会損失の金額換算などが挙げられます。

2. 顧客価値(CX向上)

「顧客価値」では、店長業務の多忙による店頭対応の減少、売場再現度のばらつき、最適な情報提供の不足、店舗スタッフの接客力不足など、顧客体験を阻害する要因をどれだけ改善できるかを評価します。

バックヤード滞在時間の短縮、売場報告の実施率向上、接客からの販売額増加、顧客満足度(NPS)の改善が測定指標となります。

3. 組織指標(EX向上)

「組織指標」では、業務の属人化、新人の立ち上がり速度の遅延、店内コミュニケーション不足、定着率・離職率の悪化といった組織課題への影響を評価します。

指示の抜け漏れ件数の減少、教育時間の削減、スタッフの働きがいスコア向上、離職率の改善などが測定例として有効です。

4. オプション価値(レバレッジ)

「オプション価値」では、店舗ごとの効果の差をなくし、全店導入にかかる期間の短縮、過去ノウハウの活用、店長交代時の引き継ぎ効率化などを評価します。

過去のツール利用率や業務の標準化状況、全店展開による効果の最大化が測定のポイントです。

5. TCO(総保有コスト)

「TCO」では、システム開発やツール導入にかかる費用だけでなく、保守運用費、教育コスト、マニュアル作成費用、紙・印刷コストといった、それに付随する全てのコストを含めた総額で最適化が図られているかを評価します。導入前後でのトータルコスト比較や、たとえ費用が多少上がったとしても他の評価軸で得られる価値がそれを上回るか、という視点も重要です。

コスト面の数値化が難しい場合は、以下のように概算的なROIを算出することができます。

  • 業務工数削減… 削減された時間 × 1時間あたりの給与
  • 教育効果… 立ち上がり期間の短縮日数 × 1日あたり生産性差額

このように、あくまで補足的な数値としてでも算出することで、投資の価値を可視化できます。

これらの5つの視点をバランスよく、かつ客観的に評価することで、DX投資の本質的な価値を見極めることができます。ROIが短期的な成果を測る指標であるのに対し、この5つの視点は「未来の可能性と組織の強さ」を測る指標となるのです。

投資の判断基準は「5つの評価軸」だけではない

5つの評価軸で投資判断を行い、「よし、やろう」と決断した後も、実際に導入して成果が出るかどうかは別の問題です。DX施策の失敗原因のほとんどは、ツールの問題ではなく導入後の設計にあります。

DX施策において「効果が出ていない、または失敗している」と回答した企業が64%にものぼるというデータからわかるように、成功には入念な導入設計が不可欠です。

失敗の多くはツールそのものの問題ではなく、導入後の設計、つまり「ストーリーライン」が描けていないことに起因します。

引用元:株式会社Gron 2026年「中小企業DX推進実態調査」

成果創出のための「ストーリーライン」

成果創出のための「ストーリーライン」【ホワイトペーパーのダウンロードはこちらから】

成果創出のためには、以下の5つのステップで綿密なストーリーラインを設計する必要があります。

  1. Step 1: ベースラインの可視化
    現状課題を定量・定性両面で把握し、原因を分析
  2. Step 2: KPIツリーの設計
    導入目的達成のため、「何を・どの程度」まで改善するのかKPIを設定
  3. Step 3: 導入期
    プロジェクト体制を確立し、ツールの設定や利用ルールを策定、セットアップ
  4. Step 4: 定着期
    モニタリング組織と項目を定め、機能拡張を視野に入れながらPDCAを回す
  5. Step 5: 効果検証
    KPI測定を実施し、測定時期と方法を明確化

この5つのステップでのストーリーライン設計を実践するにあたって、参考になる事例を次項から紹介します。

50店舗弱の小売企業が「店舗matic」で課題解決を実現した事例

50店舗弱の小売企業が「店舗matic」で課題解決を実現した事例当ウェビナーの主催である「ネクスウェイ」が提供する多店舗運営コミュニケーションツール「店舗matic」を導入した、50店舗弱を運営する小売企業がどのように成果に繋げたかを解説します。

>>店舗maticの詳しいサービス資料はこちらから無料ダウンロード!

Step 1:ベースラインの可視化 〜現状課題の洗い出し〜

まず、導入前の現状課題を定量・定性両面で詳細に可視化しました。

当初の課題として、本部からの情報過多による店舗業務負担の増大、情報量の質への不満、各部署からの連絡ルール不在による統制の欠如、お客様対応の遅延や情報誤伝達による売り逃しが挙げられました。

具体的には、以下の取り組みで現状を把握しました。

  • デバイス整理
    Gmail、チャット、ファイル共有、紙運用、店内ノートなど、本部・店舗間で活用されている全てのコミュニケーションツールを洗い出し、それぞれの使い方と課題を整理。月320件に及ぶメール量や、チャットツールでの画像報告による検索性の悪化、紙での共有による印刷コストと検索性の問題が浮き彫りになりました。
  • 店舗アンケート
    全店舗に22項目のアンケートを実施し、店舗の実行力、情報漏れの原因、不要な連絡の種類、負荷の高い業務、検索性評価などを調査。
  • 店舗ヒアリング
    業態・規模の異なる4店舗に詳細なヒアリングを実施し、情報整理にかかる時間、負担の高い業務の原因、タスク管理の実態、検索性悪化の原因などを深掘りしました。

このベースライン可視化の結果、75%の店舗で抜け漏れが発生、月間情報量は320件、月間印刷枚数は256枚、1日の情報整理・確認時間は90分、81%の店舗が検索性に不満を感じているといった具体的な数値が明らかになりました。

Step 2:KPIツリーの設計 〜経営課題とKPIの連動〜

次に、導入のコア目的である「顧客満足」と「生産性」という経営課題からブレイクダウンし、KPIツリーを設計しました。

経営課題

ターゲット課題

具体的なKPI

顧客満足

  • 施策実行力
  • 店頭滞在時間
  • 指示の実行率・回答厳守率90%以上
  • 指示情報の整理・管理時間30%削減
    (平均25分削減)

生産性

  • 情報量削減
  • 印刷前提運用の脱却
  • 情報量20%削減
  • 紙・印刷枚数50%削減
  • 指示連絡の分かりやすさ改善70%以上
  • 情報の検索性向上70%以上

測定は導入から約1年後に、ベースラインと同様のアンケートとヒアリングで実施する計画を立てました。

Step 3、4:導入期・定着期 〜トップダウンとボトムアップの体制〜

導入期では、営業本部長・取締役をプロジェクトオーナーとし、各部門の代表者を含む「トップダウン+ボトムアップ」のプロジェクト体制を構築しました。

全関係者が参加するキックオフを実施し、導入目的と期待される効果を共有することで、コミットメントを醸成しました。

ツール設計・運用ルール策定においては、ツールの「使い方」だけでなく、その機能がもたらす「意味」の理解に重点を置きました。これにより、現場に即した実効性の高い運用ルールを策定し、テスト運用と操作説明会を経て本稼働へと移行しました。

定着期では、主幹部門を明確にし、ツール利用状況の監視と定期的なヒアリング、運用改善のPDCAサイクルを回しました。特に、ベンダー側のカスタマーサクセス担当を積極的に活用し、多角的な視点や他社事例に基づいた改善提案を受けながら、定着を促進しました。

Step 5:効果測定 〜KPI達成と5つの評価軸による多角的な評価〜

Step 5:効果測定 〜KPI達成と5つの評価軸による多角的な評価〜【ホワイトペーパーのダウンロードはこちらから】

導入から1年後、設定したKPIに対する効果測定と、5つの評価軸での成果報告会(EBR)を実施しました。

【設定したKPIに対する効果測定】

  • 施策実行力
    閲覧率99.6%、実施率99.4%、回答率91.9%と、全てKPI目標を大きく上回る数値を達成
  • 情報量の削減
    当初320件/月あった情報量が257.6件まで減少し、約19.5%の削減を達成
  • 情報検索性と指示の分かりやすさ
    70.4%の店舗が検索性が改善、80.1%の店舗が指示連絡の分かりやすさが改善したと回答
  • 印刷・紙運用の脱却
    従来の印刷率80%から15%に大幅削減。これにより、年間130,440枚の紙が削減されたと試算
  • 情報整理・確認時間
    1日90分かかっていた時間が約半分の45分に削減。月間1,162.5時間の業務時間削減に貢献

この記事の冒頭で紹介した「5つの評価軸」でも、以下のように改善が認められました。

【5つの評価軸に対する効果測定】

  • リスク回避
    実施漏れによる売り逃し回避、検索性改善によるお客様対応精度向上
  • 顧客価値
    売場再現度の改善、問い合わせ回答スピード向上による顧客満足度向上
  • 組織指標
    店長とスタッフ間のコミュニケーション活性化、エンゲージメント向上に寄与
  • オプション価値
    全店舗への展開による価値最大化。今後の業務アプリ作成・実装への期待
  • TCO
    ライセンス費用は発生するものの、人件費換算で月139万円分の削減効果

この事例は、単なるツールの導入に留まらず、明確な設計と継続的な改善サイクルを通じて、店舗DXが多岐にわたる費用対効果を生み出すことを示しています。

こちらのページでは、店舗maticの導入事例を紹介しています!

>>店舗matic導入事例

まとめ

店舗DXは導入して終わりではなく、真に費用対効果を引き出すための実践的なアプローチが必要です。

まず、DX投資の判断においては、ROIだけでなく「リスク回避」「顧客価値」「組織指標」「オプション価値」「TCO」という5つの評価軸で多角的に価値を捉えることが重要です。これにより、短期的な売上貢献にとらわれず、中長期的な組織の競争力強化に繋がる投資を見極められます。

そして、投資判断が下された後には、導入から成果創出までを見据えた「KPIツリーとストーリーライン」の設計が不可欠です。現状課題のベースラインを可視化し、具体的なKPIを設定。さらに、トップダウンとボトムアップを組み合わせたプロジェクト体制で導入期・定着期を設計し、継続的な効果測定と改善サイクルを回すことで、DX施策は期待通りの成果へと導かれます。

これらのアプローチは、単なるコスト削減や業務効率化に留まらない、店舗DXの本質的な価値を最大限に引き出すための羅針盤となるでしょう。

ネクスウェイは、貴社の店舗DXを成功に導くための最適なソリューションとサポートを提供します。店舗DXの推進をお考えの方・店舗DXの効果測定にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

>>店舗maticの詳しいサービス資料はこちらから無料ダウンロード!

青木歩
青木歩
株式会社ネクスウェイ販売支援事業部。 2022年に入社後、本部と店舗間のコミュニケーションを支援するサービスのカスタマーサクセスに就任。サービスの導入から活用までを併走してサポートしています。自社ウェビナーにも登壇し、幅広い知識を活かして顧客の成功を追求しています。

人気ダウンロード資料

10社の事例
本部店舗間のコミュニケーション改善事例を10社分まとめて無料ダウンロード
本部店舗間コミュニケーション診断
3分で本部店舗間コミュニケーションの課題タイプを診断!解決ポイントがわかります

人気記事ランキング

タグ一覧